短歌・俳句(過去の投稿 2023/12)

このページは、池上本門寺『池上誌』に投稿された過去の俳句です。最新の投稿はこちらの池上本門寺 短歌・俳句をご覧下さい

短歌 選者 清水麻利子

細胞を抗がん剤が食い散らす
白血球もぼくの矜恃も
立花三千男
病窓のはるか彼方を凝視せば
雲居に動く亡妻がたまゆら
立花三千男
霜降とふ季語があるらし知らず居て
句作続けし母は命日
小林みよ子
晩秋の褐色の樹を見納めて
上高地の店冬支度忙し
櫻井 俊子
草むらに眠っているの楽士さん
涼風にのりさあ歌いましょ
辻井 良枝
老いて尚嬉しき事の多かりき
シルバー席に臆せず座る
菊地 宜子
断捨離の決意をすれど今さらに
捨てる気持のうすれゆく吾
瀧口 陽耕
秋晴れに病に勝ってあっぱれと
心スッキリ明日を見すえる
西嶋 弘子
老の死は木の枯るるごとと医師の言ふ
時雨るる夜半を送る車中で
伊藤よし江

俳句 選者 能村研三

叱られぬ齢となりぬ山椒の実
竹田 絹子
晩学に鮮やぐ付箋夕紅葉
峰崎 成規
それとなく糸口さぐる温め酒
阿部眞佐朗
雲湧ける函嶺を背に芒原
古居 芳恵
亡き母の写真丸髷菊なます
石川 笙児
白萩やはつかな風に揺れ初むる
菊地 光子
一升餅負うて一歩新松子
小形 博子
砂浜の朝練の声新松子
伊藤よし枝
猿田打つ板木に踊る秋の宵
酒井 智章
灯ともしてコンビナートの夜の秋
関根 瑶華
大花野草花博士先頭に
岩波 博庸
売られゆく黒牛の眸に草の露
池田 勝