短歌・俳句(過去の投稿 2016/07)

このページは、池上本門寺『池上誌』に投稿された過去の短歌と俳句です。最新の投稿はこちらの池上本門寺 短歌・俳句をご覧下さい

短歌 選者 山中登久子

老いてなお春には春の花愛でつ
しみじみ想う今のしあわせ
奥 貞子
亡き夫を送りてひととせ巡れども
この一年の記憶のあらず
菅谷 妙進
引きだしの奥にみつけしメモ帳に
ありし日の夫の筆跡みつむ
佃 かね子
四百年という老いの限りの伏姫の
今年の花をレンズに残す
飛田 正勝
見るたびに緑深まる銀杏の
葉秋は黄色に歩道を染めん
村上登三江
ホームにて過ぎたる四年振り返る
生きる望みは歌のみとなり
澤邊 茂野
鈴なりの青き桜桃吾を呼べり
まよひ購ふ本門寺の市に
石川正三郎
枯若葉カラス巣作り小枝置き
せっせと運ぶを我は見上げる
村山奈津子
命こそなによりの宝菖蒲湯に
老躯いたわりありがたく思う
檜山 太作
花まつり久遠林にて供養おえ
甘茶の香にしばしの時を
菊地 蓮子
ふりそそぐ太陽のなか生き生きと
今年ものぼる鯉のぼりかな
黒澤 理代

俳句 選者 能村研三

心持ち遊ぶハンドル青葉風
菊地 光子
田植機のいくたび富士山を折り返す
石川 笙児
千部経宗祖お衣更へを修す
酒井 智章
祈ぎ事を光る硬貨に宮薄暑
峰崎 成規
みどりごの拳突き出す五月かな
阿部真佐朗
一輪の椿もてなす茶席かな
今里 隆
菖蒲酒一口ごとに若返り
田所 英之
葉がくれに実梅は粒を揃へをり
保田 榮子
一本で締める宴や花の下
飛田 正勝
筍の秘めし太さを鍬晒す
柴田 初子