菅野貫首写真

法華経を御信用の上 力もおしまず唱え給え(南条殿御返事)

 今月ご紹介の聖語は、建治二年(1276)3月24日、宗祖身延の地より、静岡在住の大信者南条時光殿にお与えになられたお手紙の一節であります。南条殿には沢山のお手紙をお与えになり、本書でも何度もご紹介しておりますので、お二人の佛縁については割愛させていただきますことお許し下さい。
南条殿から帷子(かたびら)(一重の着物)、塩一駄、油五升が届けられた事に対してのお礼状で、法華経信仰の深さ、強さをたたえられ、この功徳は故南条七郎殿への最高のご供養であるとお述べになられます。お供物の品々を拝し当時の身延山でのご生活が偲ばれます。
そして今月ご紹介の聖語
「私日蓮は今、草深い身延の山中に居り、直接お目にかかってお題目のお話をし、お心を安らげる事が出来ない事、申し訳なく思っております。ではありますが、教主お釈迦さま、梵天、帝釈天、八幡大菩薩等の佛さま、御守護神はあなたのご修行をしっかりとご覧になり、御経、お題目の声を聴いて下さっておられる、そしてお守り下さっている。この事を心にとどめ、力も惜しまずお題目をお唱えなさい」
とお説きになられ、更に
「法華経、お題目のお力、お功徳を御信用、信じきって、力もおしまず至心にお題目をお唱えなさい」
とくり返しご教示なさいます。
一つの実話をご紹介します。十数年前、私と唱題行を修行しておりました同信同行同学の若夫婦がおりました。そのお二人の宝、幼い児を亡くされたのです。悲嘆にくれる若夫婦に対し、私はなぐさめの言葉もなく今月ご紹介の聖語の一節を手紙に浄書し、お届けしました。その後、私が静岡の本山に移り一年ほどして「私達夫婦も一生懸命お題目お唱えしています」とのお手紙をいただき、「よかった」と胸を撫でおろしておりました。それから更に一年後、お二人は静岡にご来山され、
「先般亡くなった子の夢を二人共で見て不思議に思っていたところ、それから一ヶ月、家内が妊娠している事が判明し、あと数か月で生れます」と涙の報告をいただきました。お祖様のおっしゃる通り、仏様ご守護神様はお二人を守って下さいました。三人で報恩感謝のお題目をお唱え申し上げました。その生れた男子は今や中学生で、サッカー選手として育っています。
「法華経を信じ、力の限り唱えなさい」と、大聖人は私たちにこのようによびかけておられます。


合掌

日彰