菅野貫首写真

佛前での(守護の)御約束をば たがえさせ給うべき(上野殿御返事)

 今月ご紹介の聖語について述べる前に、お手紙のお相手「上野殿」について少しご紹介させていただきます。上野という名は今の静岡県富士郡・上野郷の地名で、同所を所有していた南条氏一族各位に与えられたお手紙で土地の名をとり「上野殿」と呼びならわされております。南条氏宛名のお手紙も遺っております。ちなみに南条氏(上野殿も含め)にお与えになられたお手紙は現存するもので五十通に及びます。これは富木常忍氏・四条金吾氏の三十四篇にくらべても最も多いお便り、ご教示であります。(ご遺文辞典)
その理由として、身延山に近かった事、沢山のお供物を届けられた事によりますが、私はご一族の皆さんが日蓮聖人を心身共に頼りになさっておられた篤い信仰者であったからだと拝しております。
 今月ご紹介の南条時光殿に宛てた「上野殿御返事」は建治元年(一二七五)五月三日身延山の大聖人に上野殿が「干した芋一駄その他」を供養された事へのご返事であります。本文で上人は供養の尊さ、ありがたさを説かれこのご供養は故父上南条兵衛七郎殿へのご供養であるが、それはお釈迦さま、法華経に捧げるご供養なのである。そのお功徳によって父君の成仏は勿論のこと、貴殿もご加護をいただけるであろうとお説きになられ、その理由として
「お釈迦さまが法華経をお説きになられた時、その席で令和の今日・末法の時代に法華経を弘め、受持・修行する人には多くの困難があると語られます。その時ご説法の席に連なっていた梵天・帝釈・日月・四天など多くの諸天善神は法華経を受持する者を必ずお守りします、とお誓いになられます。」
この事をふまえて、大聖人は今月の聖語
「諸天善神はお釈迦さまのみ前で法華経受持者を守護すると約束なされたのだからそのお約束を必ず守り守護して下さるであろう」
とお説きになられるのであります。
 ところで法華経では、梵天・帝釈諸天に加え観音経第二十五章に於いて観世音菩薩がお釈迦さまの前で私達をお守りするとお誓いになられます。次の第二十六章陀羅尼品では、薬王菩薩・勇施菩薩・毘沙門天王・持国天王・十人の羅刹女・鬼子母神・十五人ものご守護神さま達が、私達も法華経受持者を守護しますとお誓いになられます、ですから観音さまが加わると十六人のご守護神さまが法華経を信仰している私たちをお守りくださると誓っておられるのです。(他にもおられますがここでは割愛させていただきます。)
それだけではありません。七面大明神さまはじめ各ご寺院由来のご守護神もそれぞれご守護を約束しておられます。本門寺ですと長栄様、大黒様、日朝様、清正公様と四人のご守護神さまがおられます。本門寺の檀信徒はこれほど多くのご守護神さまにお守りいただいているのです。そのお約束により私達はお守りいただいているのだ。この事を自らの行動で「実感」しなさいと今月の聖語はよびかけておられるのです。


合掌

日彰