国土乱れん時鬼神乱る 故に万民乱る(顕立正意抄)
今月ご紹介の聖語は文永十一年日蓮聖人五十三歳、身延の地からお弟子檀那の人々にお与えになられたお手紙の一節であります。
文応元年、日蓮聖人は鎌倉幕府に対して「立正安国論」を奉呈「人々の命を第一に考える政治の実現」を求められますが、聴き入れられるどころか、謀反人として数々の迫害を加えられます。そして三年後。日本各地で発生している天変地異、自然災害、疫病の流行、大小武家の争い、加えて農民や庶民同士の争いが多発、そうした現実をご覧になられ改めて立正安国論の予言が的中していることに思いをいたし、鎌倉・千葉等のお弟子信徒の方に「立正安国論」の正しさ、尊さを説かれ各自の自省と信仰増進を求められたのが今月ご紹介の聖語です。
「国の政り事が乱れると、それに合わせるように一般庶民の心に〝自分さえ良ければ〟の心をすすめる悪鬼神が宿るのである。国が乱れることに誘われて人々の心も乱れ、悪鬼神の思い通りに悪い事が重なるのである。気を許してはならない。」とお説きになられます。
このご教示、七百五十年後の今日の私達にも当てはまる大切なご警告であります。自分さえ良ければ――。自分の考えは正しい――。自分は正しいことを行っていると信じ込む我欲の行い――。これこそ悪鬼がその身に入った時の行いであると戒めております。まさに昨今の風潮そのものと拝します。
私はネット等の事について多くを知りませんが、それでも昨今のネットを主とした情報通信の凄さには驚かされます。自分の流した無責任な情報が如何に社会の害になっているか、相手を困らせ傷つけているかなど眼中になく、只々〝話題〟として自分の主張を、我欲を通したいという事だけです。或はお金目当てでしょうか?
七百五十年前、日蓮聖人が示された警告「万民乱る」は、今日の日本国民、私達に示された強いご警告であると改めて痛感いたします。更に私達の廻りを見渡してみますと、ネット情報だけではありません。日常生活に〝我欲の塊〟が渦巻いております。この情況を想定しておられた日蓮聖人は先に示しておられる立正安国論の中で、
「汝(なんじ)、一身の安堵(あんど)を思わば四海(全体)の静謐(せいひつ)(平安)を祈るべし。」
とご警告なさいました。私の理解で今日の言葉で紹介します。
「あなたが自らの心と体の安らぎを得たいと思うのなら、まず全体の幸せを考える大きな心を持ちなさい。」
と警告なさいました。我欲に走り過ぎない事、悪鬼神を意識して生活する事、今月の聖語はこのように呼びかけておられます。