菅野貫首写真

法華経の御力の殊勝なるを知るべし(聖人知三世事)

今月ご紹介の聖語は、文永十一年、身延山より千葉県中山在住の富木(とき)常忍(じょうにん)師へお与えになられたお手紙の一節です。
 日蓮聖人はこのお手紙でまず『三世(さんぜ)』、つまり人間の過去・現在・未来について述べられ、三世の全てを悟られているのはお釈迦さまであり、そのお釈迦さまが未来永劫、私達の三世を救うためにお説きになられたみ教えこそが法華経であるとお説きになられます。
先師は「自分の過去を知りたいと思ったならば自分の現在の生活を直視しなさい、自分の現在は過去の行いの結果だという事がわかるでしょう。自分の現在世を知りたいと思ったならば、今自分は何を行い、何を話しているかを素直に見定めなさい。自分の未来世を知りたいと思ったなら、自分が今行っている事の結果が未来世の姿であることを知りなさい」と説かれております。つまり三世と言うと何やら遠いことのように受け止められるかも知れませんが、現在の自分の事、行いの『姿』なのであります。では今私達は「どう生きればよいのか」この思いにお答えになられたのが今月の聖語であります。
聖人のお答えは「法華経というお経は、私たちの過去・現在・未来の全てにお救いの力を持った、まことに尊いみ教えであり、三世に気のついた人に現在世を生きるうえで大きな力を与えて下さるみ教えなのである」であります。
先に「私たちは過去世、過ぎ去った事を変える事は出来ないが、現在の行いによって未来は決定される」と申し述べました。つまり過ぎ去った事に反省という眼を向けることによって未来を含めた現在の生き方がきまってくるこのことであります。
私達は今どう生きたらいいのか、自分は今どういう生活をしたらよいのかの答えは法華経の中に説かれている。人の生き方悩みは千差万別、その全てに答えを出して下さるのが法華経お題目なのである。と日蓮聖人はご教示くださっておられます。
このご教示実現の道すじの一つを先師のご教示で紹介します。
「御宝前に額ずき、心を静かにして、読経唱題をしなさい。その時、私の前には佛祖三宝さま、宗祖大聖人が来て下さっている。その前に自分は座っていると深く心に留める。悩み事の一々を口に出さずとも全て佛祖三宝さまはわかって下さっている。自分は日々、ひたすら読経唱題するだけである。この浄行によって道は自ずから拓かれてゆくのである」
 三世はあるけれども、現在の生き方によって全ては決定される。その力を私たちに与えて下さるのが法華経お題目である。今月の聖語を私はこのように拝受させていただいております。


合掌

日彰