菅野貫首写真

末法の始めに佛説の如き 行者世に出現せん(法華行者値難事)

 今月ご紹介の御妙判は文永十一年一月、佐渡ご配流の地からお出しになられたお手紙の一節であります。先号で「信じきる力の強い人は佛天の御加護も強い」とのご教示をご紹介いたしましたが、今月ご紹介のお手紙は正にそれを証明されたご教示であります。
 二千五百年前お釈迦さまは法華経説法の席で、末法時代の人々救済のためにこの法を説く人が必要であると教示されます。それを聞かれた舎利弗(しゃりほつ)尊者をはじめお弟子の方々は「私達が末法に生れて法華経を弘めましょう」と申し出られますが、お釈迦さまは「止(や)みね善男子(ぜんなんし)」と止められ、続いての説法、従地涌出品で「国土震裂して上行菩薩はじめ千万億の菩薩同時に出現する」と云う奇瑞を示され、更に如来神力品で「上行等の菩薩大衆にそなた達に末法の時代の弘通をまかせる。その故に如来、私の持っている一切の法、一切の神力、全ての教えの藏、救済の事実の全てを今与える。心して弘めるがよい。」とお説きになられ、上行菩薩はじめ無数の菩薩達に末法の時代の布教をまかせられます。
今月ご紹介の聖語は、この説法を末法の時代に心と体とで受け止められた日蓮聖人からの私達への呼びかけであります。
「お釈迦さまは自分の亡きあと二千年を経過した時のことを末法(まっぽう)の時代と言い、自分の在世の時とは大きく異なり、人々は教えを信ぜず、敬わず、自己中心的な荒れた生活をおくり、争いと苦しみの時代となる。この時代の人を救うために私は〝救済の教え法華経とそれを弘める人を遣わす〟その人を〝法華経の行者〟と言うのであるとお説きになられます。このご教示を日蓮聖人は真実と受け止められ、末法の時代には上行菩薩が必ず出現される。出現されなければお釈迦さまの説法は真実ではなくなる、私はそれを真実として証明しよう。」今月の聖語は日蓮聖人決意の表明であります。
そのまかされた人〝法華経の行者〟は自分であると日蓮聖人は受け止められます。龍の口法難での奇瑞、佐渡配流の地での多くの体得、実感。お釈迦さまが法華経で説かれた末法弘通の条件にあてはまるからである。とその理由を示され、法華経、南無妙法蓮華経の教えこそが末法弘通の為にお釈迦さまが遺された唯一の教えである。と説いてきた私の弘法は正しかったのだとお説きになられます。
このお手紙を鎌倉在住の人々にお出しになられてから二ヶ月、日蓮聖人は足かけ四年に渡る佐渡ご配流を赦免(しゃめん)、〝末法に法華経の行者出現と佛天のご加護〟というお釈迦さまの予言は歴史上の事実となります。私達・門下一同が日蓮聖人のことを〝上行菩薩〟再誕の人と申し上げる理由であります。
 日蓮聖人がご生涯を通してお示下さった〝法華経の行者〟の信仰心、この信仰心をあなた達も守りなさいと今月の聖語、ご教示は、私達に呼び掛けておられるのであります。


合掌

日彰