菅野貫首写真

一向に法華経の題目を唱え給うべし(師恩報酬抄)

今月ご紹介の聖語は日蓮聖人の兄弟弟子、義浄房、浄顕房へのお手紙の一節です。このお手紙を書かれる六年前、聖人は小松原で東條景信の襲撃を受け、額に深い傷を負われます。その聖人をお師匠様の道善御房が花房(現蓮華寺)までお見舞いに来られた時、傷のある身であり乍らお師匠さまの身を案じ『法華経の尊さ、法華経による人類救済』をお説きになられ、お師匠さまに法華経帰依をお勧めになられます。それから六年後、お師匠様のいらっしゃる清澄寺にお釈迦さまのお像が建立されたと聞き『お師匠さまも法華経を信じて下さった』という喜びのお手紙であります。この中で『強い言葉でもその人を救うのであれば優しい、温かい言葉である』とお述べになられ、小松原法難にめげずお師匠さまに法華経帰依を強くお勧めしたのがこのことに当たると申され、師恩に報ずることが出来たと受け止められます。 (題名もこの事からのものであります。)
そして今月の聖語で二人の兄弟弟子に対し法華経入門と唱題の行をすすめられ、
「雑念を捨ててただひたすら法華経の題目、南無妙法蓮華経をお唱えなさい。それがあなた達が大安心へ至る道、全人類幸福への道なのです。」 とお説きになられます。
このことは令和の今日に生きる私たちへのご教示でもあります。全体の平安を念じ、自分自身の大安を目指しなさいと。
池上本門寺では毎月第四金曜日の午後五時半から「法話と唱題行の会」を開いておりますが、実はこの唱題行、今月の聖語、ご教示に従っての修行法であります。
唱題行は雑念を除いて唱題するための準備として「浄心行」、心を整える行から始めます。お祖師さまの前に自分をさらけ出し、心を平らかにした状態で本来の行として「正唱行」、お題目をお唱えします。はじめはゆっくりと心の状態に合わせ唱え、次第に早くなり、又次第にゆっくり、最もゆっくりになっていきます。唱題を経て大安心の行である「深心行」に入ります。形は浄心行と同じですが内容は大きく異なります。自分が今佛さまお祖師さまに守られている、と拝受出来るからです。
本誌先月号で「法華経のことを他の人にすすめなさい」との日蓮聖人のご教示を紹介しましたが、今月の聖語はその実行の一例として受け止めて頂ければ幸いです。


合掌

日彰