菅野貫首写真

人界の仏界は水中の火 火中の水 甚だ信じ難し(観心本尊抄)

 今月の聖語の本文をご紹介します。
『人界(にんがい)所具(しょぐ)の佛界(ぶっかい)は、水中(すいちゅう)の火、火中の水、最も甚だ信じ難し』であります。いつものように私の領解で説明させて頂きますと、佛さまは、私たち衆生も佛さまと同じようにお悟りの心、境地に至ることが出来るとお説きです。しかし、私たち衆生から拝しますと、〝この私がお釈迦さま、お祖師さまと同じ境地に至れるなど、とても、とても〟と言うところが実感であろうかと存じます。そういう私たちの気持を十分にご承知のお祖師さまは、
「それは例えてみれば、水の中に火がある。燃えている火の中に水がある。と言われても信じることが出来ないように、甚だ信じがたいことではあるけれども私たちが佛性を持っているということ、これは真実である。
 それを実感、実体験し、実生活に生かしてほしい。このことを願って私は南無妙法蓮華経のお題目を皆さんにおすすめしているのである」
とお説きであります。
 ではどのようにお唱えすればよいのか。お題目をお唱えする方法は沢山あります。本稿ではその中の一つ、自身の安心のためにお唱えするお題目の修行法、「唱題行」をご紹介し、ご自分の心の中に存在する佛さまの宝、佛性発見、実感の一助にしていただければと思います。
 まず、お佛壇の前、もしくはお部屋の静かなところに坐ります。椅子に腰かけていただいても結構です。背すじをのばし、手をひざ上におき、目を軽く閉じ、息を口から静かに吐き出します。全部出たら鼻から吸います。三回~五回くり返しますと心が静かになります。そこで合掌し静かに南無妙法蓮華経とお唱えします。はじめゆっくり、口に合ってきたら少し早くお唱えします。この時全ての雑念を無くすことが大切です。最終的には「佛さまのお慈悲の光明に照らされている自分を感じる」ことにありますが、当面はともかくお唱えすることです、三分でも五分でもお唱えし、そして又心を静かにします、この時、ご先祖様、亡き方の事を祈りますと、修行とご供養が同時に行なわれたことになります。心を静めて、お題目を唱え、唱え終わったら又静かなひと時を持つ。これが「唱題行」です。
 池上では、毎月第四金曜日午後五時半から行っており、毎月百名以上の方がご参加、ご修行なさっておられます、私たちが佛さまと日蓮聖人と同じ境地に至ることは、むつかしいことではありますが、この修行によって一時(いっとき)の佛さまになることは可能です。そして自分の心の中に佛さまが在られると実感出来ることもたしかです。ご自宅、池上での唱題行によって心の安らぎを得られますこと願っております。


合掌

日彰