菅野貫首写真

釈迦如来は我等衆生には 親なり 師なり 主なり
(南條兵衛七郎殿御書)

「久遠実成の本師釈迦牟尼佛。つまりお釈迦さまは私たち生きとし生ける者、一切衆生にとっては、私を生んで下さった両親のような方、人生の道しるべ、人間として生きることの大切さを教えて下さったお師匠さま、先生でもあり、更には一人では生きてはゆけないこの世にあって人々が仲良く生活してゆくためのよるべとなるご主人とも申すべきお方なのである」
 今月ご紹介申し上げている日蓮聖人のご文章は、聖人四十三才千葉県安房において、静岡県在住の信徒南條兵衛七郎殿にお与えになられたお手紙であります。この時南條氏は病気で伏せっておられましたので南條氏が病に打ち勝ち生きる力を得ていただきたいとの強いお気持からおしたためになられたお手紙であります。当時の日本では〝苦しい現実の娑婆を捨て西方極楽浄土、死後の世界に救いを求める〟宗教が全土に弘まっておりました。南條氏も病気による気の弱さからこの傾向になびきつつあったと思われます。
このことを知った日蓮聖人は
「佛さまのみ教えは死後の世界のことを説いた教えではありません。今生きている私たちに生きる力を説かれたみ教えです。現実の自分の在る姿をしっかりと認識し、如何に生きるか、どのように克服するかをお説きになられたのが仏の教え、つまり法華経なのです」とお説きになられます。
その上で今あなたの心は病気のために弱くなっている。そのお心を正常な心に直すこと、そのためにはまず心を静かにして合掌し南無妙法蓮華経のお題目をお唱えなさい。久遠の佛さまであるお釈迦さまはあなたが子供のころ優しく見守って下さったご両親と同じ、いやそれ以上の優しさであなたを見守って下さるでしょう。それだけではありません。あなたに人の道を教えて下さったお師匠さまと同じ姿であなたの弱った心を正して下さいます。もう一人今あなたがお仕えしているご主人の立場であなたを励まして下さいます。つまりお釈迦さまはお一人で親と師と主との三つの徳をお持ちなのです。三つのお徳を持っておられる久遠実成の佛さま(未来永久に人々を守る力をお持ちの佛さま)があなたを守って下さっているのです。心安らかに休養なさることをおすすめします。
私の理解を加えての説明になりましたので長くなってしまいましたが、南條さんへのご教化は時間空間を越えて現代人、私たちへのご教示であるとお受け止めいただきたいのであります。
このお手紙では更にもう一つ大事なことをお説きになられます。それは法華経は二千五百年前、お釈迦さまのご遺言によって伝えられている最も尊いみ教えであること、弘める国は日本が最初、弘める時は今である、このことは私日蓮の自説ではなくお釈迦さまの「金言」によるものであることをお説きになられます。このことを五義(教・機・時・国・序)と申しますが、詳細の説明は失礼させていただきます。


合掌

日彰