菅野貫首写真

国土乱れん時鬼神乱る 故に万民乱る
(災難興起由来)

「天変地異、人心の荒廃などによって国全体の乱れがある時は、その国を守っておられる神々のお力が乱れているということ。つまり守護神がその力を失っておられるということである。
 したがって、その神々のご守護によって生活している私たち衆生(気がつかないで生活している人間)の生命力も弱まり、心も乱れてゆくのである」

 今の世界、日本の現状を平和であると観るか、乱れていると観るかについては、論の分かれるところでありますが、少なくとも自然は悪く変わりつつあること、人々の心が自己中心主義というより我欲化し、さまざまなトラブルの「源」になっているということ、このことはどなたも認められるところでありましょう。そして、一歩すすめて社会全体をながめてみた場合、セクハラ、パワハラ、地位の悪用、隠蔽、等々も又世の乱れ「我欲化、物欲化」の現れと思うのですが如何でしょうか。更にもう一歩すすめて、日本人の品格が落ちてきたと思いませんか。かく言う私も、貫首らしくない貫首と陰口をたたかれておりますから大きな事は言えませんが、政治家、大企業にはじまって世の指導者の方々、そして一般庶民に至るまでおしなべて不作法、行動の下劣さが目立ちませんか。たとえば食事を例にとりましょう。仏教の先師の言葉に「仏教が日本に入ってくる前までは、食事もまるで鳥がエサをついばむような不作法であったが、佛法が伝わってはじめて、人の食事らしくなった。とのご教示がありますが、又元にもどってきていると感じるのは私一人でありましょうか。
 こういう状況を全てまとめて拝見する時〝世の乱れ〟と言うのであると私は拝受しております。
 今月ご紹介の日蓮聖人のご教示、災難興起由来は鎌倉でお表したためになられ、ご真蹟は中山法華経寺に格護され重要文化財の措定をうけております。
 さて、聖人ご在世中の七百年前の戦乱、疫病、飢饉は現代の日本にありません。では災難は無くなったのではありましょうか。「否」であります。世界各地で行われている戦乱をさし引いても「地球滅亡」という難がひしひしとおしよせてきている事実を見逃すわけにはまいりません。病気はどうでしょう。流行と言えばインフルエンザくらいしか思い当らない昨今ですが特効薬と病原菌の追いかけっこはスピードを早めております。日本に飢饉はありませんが食物の輸入がとまった時のことを思うとぞっとします。あらゆる角度から「国の乱れ」を直視しつつ、自らの足もとを固めなさい。今月の聖語を私はこのように拝受しております。


合掌

日彰