一切の道俗 一時の世事を止めて
永劫の善苗を植えよ
(守護国家論)
春四月、出発の月であります。学校、就職新人だけではありません、定年退職の方も次の生活への出発でありますし、企業、学校と言った組織にとっても出発の月である事、申すまでもありません。この月に当たり、又昨今の日本の実状を直視し、皆様に是非お伝えしたいのが、今月の聖語日蓮聖人「守護国家論」のご教示であります。
この論文は聖人三十八才、鎌倉に於いておしたためになられた長文で、格調高い、本格的国家論を述べられた論文であります。お相手は文中には示されておりませんが内容から拝しますに、当時鎌倉に居住しておられた二十代の青年鎌倉武士、池上宗仲・宗長ご兄弟、四条金吾、富木常忍、等々の面々であったのではと私は拝しております。「今は多事多難の時代である。何かと多忙であろうけれども、ひとときそれらの世事から離れて、国家本来のあり様、人の世、自らの人生のあり様を考えなされよ」とよびかけられたのが、本書であります。
「今、この世に於いて生活しておられる全ての人々、在家の方々、道を求めて修行しておられる出家の方々、常日ごろ行っていることの手を休めて私の方、いやお釈迦様が今日のこの世界の状態を想念予言されたみ教え、法華経の教説に一時、耳と目をかた向けていただきたい。そして、この世の全ての人々が今生だけでなく来世に至るまでの心の安らぎ大安心の境地に至る佛の種を植えられることをおすすめしたい」
今月の聖語で日蓮聖人はこのようによびかけられたのであります。
七百年前日蓮聖人が若き鎌倉武士を当面の相手とし、全ての人々によびかけられた今月のみ教えを、不肖私が平成の世の今日、世界全体が争いの中に在る世の人々に対し、自己主張が先にあり、他者との共存の有難さを忘れている日本人に対し、軍備増強論がやけに目立つようになった日本政府に対し、又この世の全ての人々、機関に対し申し上げます。
二千五百年前お釈迦さまは〝四姓は平等なり―全ての人々は平等であり、幸せになることが出来る〟とお説きになられ、日蓮聖人は〝立正安国―正しい教えによって国、人々は救われる〟と示され、日蓮聖人のみ教えを信じた宮沢賢治は、〝世界全体が幸せにならない限り、個人の幸せは実現しない〟と絵解きされました。このこと、このみ教えをふまえて申し上げます。
『皆さんもう少しゆっくり歩きませんか、自然の声、宇宙の動きに心を合わせてみませんか。そしてみ佛のお慈悲の光明に照らされている自分に気づき、み佛のお声に耳をかたむけませんか』と。
四月は出発の月と申しました、出発する前にまず腰を下ろし、息を調え、心を安めて、自分は、人は、人生は、み佛はと自らに問うひとときを持たれることをおすすめします。