青少年諸君 志を持とう

鳩、化して鷹となり、雀、変じて蛤となる。悦ばしいかな、汝、蘭室の友と交わりて、麻畝の性となる。
(立正安国論)

『中国の古書、礼記集説に、ちゅうしゅん仲春に鷹が化して鳩となり、ちゅうしゅう仲秋に鳩が化して鷹となり、きしゅう季秋に雀が大水に入って蛤となる。ということが説かれているが、あなたが志を立て今までの生き方を改めるということは、この故事の示す通り、大なる成長の第一歩であり大変に悦ばしいことである。
 更に付け加えて言うならば、同じく中国の古書、孔子家語に志ある人と交わるということは芝が蘭の室に入ると久しくして自ずから芳しくなる。との教えのように、あなたが志ある人と交わるならば又自然に志を持つ人の人格を身につけるようになられるであろう。このことを更に例えて言うならば、麻の畑に蓬を植えると地にはう蓬が真直ぐに成長するようなものである。』


 日蓮聖人は自分の意見を述べるにあたり、この事は自分勝手に言っていることではなく、先人の説・古代の書物の説を例としてあげ、ご自分の意見を述べるのを常としておりますが、今回も志を立てることの大切さを、古代中国の古書の説によって証明なさっておられるのです。このことを心におき耳をかたむけて頂きたいと思います。
 初夏五月、多くの若者が社会人として、学生として人生のスタートを切っております。当山にも四人の若者が上山しました。立正大学で四年間学ぶ者、大学を卒業後二年間の僧道教育を受けようとする若者であり私はその志に大いなる期待を持っております。
彼等も含め、私は全ての若者諸君に〝志を持ちなさい〟と呼びかけております。そして必ず「志のある者、志を持って生活している者に対し、み佛・ご守護神は守って下さる。」更には「志ある者を助ける人(仏教ではへんげ変化の人と云います)が現れものである。」ということを付け加えております。
 さて今一度日蓮聖人のご教示をご覧下さい。鳩が鷹となると仰せです。現実的にはどう考えても無理ですが、鳩が鳩の姿のままで鷹のように大空を飛ぶ「志」を持つよう「変化」することは可能です。そして又ごくごく平凡な私たちが蘭室(高い志に生きている人)の人と交わりを持つことによって、自分も又志ある人のような立派な人間になってゆくことが出来ると仰せです。
 そして「志を立てる者は一人ではない」ということ。内容的には違っていても、必ず仲間がよって来るということです。その仲間とは友であり、同僚であり、学友と様々ですが、あなたの志を持つ姿に共鳴し寄って来るのです。あなたも又志を持つことによって、友の見方が変わってきます。「志は人を呼びますし、人を引き付けます。志は生きているのです。」新しい旅立ちをした青少年諸君、いやすでに歩み始めている諸君も「志」を持ち豊かな人生を歩もうではありませんか。


合掌

日彰