別れと出会い

 今年の三月彼岸前、能登半島地震の被災地でも卒業式が無事に挙行されたニュースを見ました。
 卒業生の表情からは、卒業の喜びと学友との別れの寂しさ、そして新たな学び舎へ赴く不安と共に、心なしか震災に対する複雑な心境の表情が見受けられると感じたのは私だけでしょうか。
 池上本門寺でも三月は、学僧の卒寮式(卒業式)と上山式(入学式)を行います。令和六年は、学僧一人が卒寮し、新たに一人の若人が学僧としての道程を始めます。
 卒寮する学僧は、私の侍者として朝勤を含む多くの法要に共に出仕し、思いおこせば様々な彼との思い出が蘇ってきます。彼との別れは寂しいですが、池上本門寺で培った経験を基礎とし、僧侶としての更なる研鑽を積み重ねて多くの人々に慕われる僧侶になって頂きたいと願っています。
 また新たに学僧になる若人は、今までの人生経験とはかけ離れた学僧生活を体験することになります。彼には先輩学僧と役課僧侶から、僧侶としての心構えからお経など、多くの事柄を学び、そして池上本門寺での学僧生活をやり遂げてほしいと願っています。その一人一人の学僧の成長を見守る事は、池上本門寺における私の大切な役目でもあるのです
 いずれにしても親しき若人との別れと新たな出会い。彼らはどのような表情でそれぞれの式に臨むのでしょうか。
 私自身も寂しくもあり、楽しみでもある三月なのです。

合掌

執事長 木内隆志