栄冠は君に輝く
夏の甲子園の高校野球で「栄冠は君に輝く」という歌が毎年恒例で流れてきます。誰でも一度は聞いたことのある曲ではないでしょうか。
あまり気にせず恒例のテーマソングくらいにしか思っていませんでしたが、数年前にこの曲を作曲した古関裕而さんが朝ドラのモデルに取り上げられたこともあって個人的に思いを至らすようになりました。
「♪雲はわき 光あふれて…」という夏の自然の描写から始まり、「♪若人よいざ」という若者への呼び掛け、サビ前で「♪いさぎよし ほほえむ希望」と続きます。2番では「♪青春の 賛歌をつづれ」、3番では「♪感激を まぶたに描け」となり、最後に「♪ああ、栄冠は君に輝く~♪」と締めくくる歌詞は加賀大介さんという方の作詞になります。
この曲は戦後間もない1948年の大会から採用されています。その数年前、日本が戦争に突入していき、スポーツをする自由がなくなり、若い人たちが次々と兵隊に取られ、遠い異国で命を散らしていったという悲劇が起こったということを踏まえてこの曲を聴くと、甲子園という舞台で平和に野球をすることのできる喜び、健康な若者同士が健全にスポーツで対戦できることの尊さ、何より未来ある若者が平和に命を燃やしていることに対する感動を覚えずにはいられません。
歌詞の最後に「栄冠は君に輝く」とありますが、勝敗の結果や対戦のアヤなどはまったく問題ではなく、等しくその場の誰にも、その場だけでなく命ある全ての若者に対して「栄冠は君に輝く」なのです。
戦争を終えたばかりの状況で健康な若者が平和のなかで一生懸命スポーツに打ち込む姿の尊さを讃え、その瞬間を謳歌してほしいという祈りが伝わってくる歌詞で、その姿はそれだけで栄冠が輝いているようであると、まさしくそのように感じます。
夏の風物詩のように行われる高校野球ですが、コロナ禍で中止になったりもしました。甲子園が始まるとどこの強豪校が勝ったとか、こんな記録が生まれたなどとニュースになりますが、結果に関係なく、高校球児が汗水流し泥だらけになって野球に打ち込んでいる姿が私たちの心を惹くのは、それが決して当たり前の出来事ではなく、まばゆい奇跡だからなのかもしれません。