大人になるということ

 突然ですが皆様、ご自身のことを『大人』だと思ったのはいつのことですか?
 日本では20歳になると成人を迎え「大人の仲間入り」などと言われますが、19歳から20歳になって突然大人になるわけではありませんね。その昔は「元服」などと言って今よりずっと早く大人にならなければいけなかったようです。日蓮聖人も12歳のときには親元を離れて清澄に入り、仏教の神髄を求めて仏道修行に励むようになります。
 私自身が大人になったと感じることができたのは、恥ずかしながら30歳のとき、自分の両親に感謝の気持ちを持てるようになったときでした。ご飯をつくってもらっても、学校へ行かせてもらっても、30年間育ててもらっても、自分自身できちんと親に感謝の念を抱いたことはなかったように思います。
 親元を離れ、本門寺で修行させていただき、少し落ち着いたときにふと親への感謝の気持ちを素直に持てるようになったことを今でも覚えています。そのときに、「自分も大人になったなぁ」と思ったりしました。
 体が成長しても、成人としての権利を得ても、大学を卒業しても、就職しても、周りへの感謝の気持ち、思いやりの気持ちを持てない人は『大人』とは言えないかもしれません。
 「成熟した社会」という言葉を耳にしますが、社会全体が『大人』になってみんながお互いの気持ちを思いやることのできる優しい社会に成長していきたいものです。

合掌

畑信行