彼岸に思うこと
暖冬のせいなのでしょうか、本門寺の周辺で霜を踏みしめたり、雪景色を見ないままあっという間に春を迎えてしまったように思います。冬らしい季節を感じることがなく過ぎ、地球温暖化が私たちの身近な問題であると改めて肌で感じます。雪解け水が大地を潤してくれるように、その季節が持つ大切な役割があります。私たちが今できることを実行しなければならない時が来ています。
さて、3月は卒業、転勤、引っ越し等々様々な場面に於いて大切な人との別れの季節でもあります。人によっては別れの苦しみのあまり何日も悲しい思いをすることもあるでしょう。
仏教ではこうした苦しみを四苦八苦と言い、その中でも愛する人との別れを「愛別離苦」と呼び、人間の苦しみの代表的なものとされております。
しかしながら、近頃ではSNS等の発達により特別な技術が無くとも気軽にいつでもどこでも人と繋がり合うことが出来ます。そうした意味では別れの苦しみは昔ほど感じられないのかもしれませんが、実際に会って話しができる嬉しさは変わらないのではないでしょうか。
間もなくお彼岸を迎えますが、技術の進歩によりいずれご先祖様や亡くなられた大切な人といつでもどこでも繋がれる日が来るかもしれません。例えそうなったとしても、ご先祖様が眠るお墓をお掃除する時に触れた石の感触や水の冷たさ、お線香に火を付ける時の香りがあってこそ、お参りに来たなと実感が得られるのではないでしょうか。
今年の桜の開花はずいぶん早いと聞きます。お彼岸の頃には本門寺の桜も満開で彩られ、全山ピンク色に染められることでしょう。ご先祖様と一緒に桜を愛でていただき、近況などを語らっていただきたいと思います。ご参拝をお待ち申し上げております。
合掌
山村栄慎