空が広い

 本年四月より事業部執事を拝命致しました野坂法章と申します。よろしくお願い致します。
 現在は池上本門寺の塔頭(たっちゅう)寺院(周辺の本門寺に縁のある日蓮宗寺院)の住職も勤めております。大森の病院で生を受け、以来池上で育ち暮らしてきましたので、本門寺は小さい頃からの遊び場でした。その頃は無心に境内を走り回っていたので特に意識はしていませんでしたが、長じて僧侶になって境内を歩いていたときにふと気づいたことがありました。それは本門寺は「空が広い」ということです。
 本門寺は東京二十三区の中では珍しい山の上にあるお寺です。寺院には山の上にあるなしに関わらず必ず「山号」と「寺号」があります。本門寺の場合は、寺号は勿論「本門寺」ですが、山号は「長栄山」といい、山の名前もそのまま長栄山といいます。私たちは本門寺のことを「お山」と呼びますが、まさしく長栄山というお山の上にあるのが本門寺なのです。
 初めて本門寺にお参りされる方の中には「都内で山の上にこんな大きなお寺があるなんて知りませんでした」と驚かれる方もいます。二十三区内とはいってもその南端に位置する大田区にはそれほどの高層建築物はありません。正面の石段を登り、仁王門をくぐると広々とした大空を背景に日蓮聖人御尊像を安置する大堂が威風堂々と構えています。私も僧侶になって初めて、都内ではそういった風景が希有であること、有り難いことに気がつきました。
 都心では高層ビルに遮られて広い空を見上げることはなかなかできません。本門寺にお参りの際には是非境内の真ん中で全天を仰ぎ見て心をリフレッシュさせて下さい。(できましたら晴天の日に・・・)

合掌

野坂法章