己亥
ご存じの通り春の節分を迎えて新しい干支へと変わる。
平成三十一年は己亥 (きがい・つちのとい) の年である。
六十年前の己亥の年、昭和三十四年は四月十日に、時の皇太子明仁親王と正田美智子様が結婚された。明仁皇太子は後に平成天皇となり、そして本年退位されるわけで、この六十年は後世明仁陛下と美智子妃の時代と評されるかもしれない。
昭和三十四年といえば安保反対のデモ隊が国会中央玄関になだれ込む事件が有名なように、政治は不安定であり、死者五千人以上、被害家屋五十七万戸を出した伊勢湾台風が日本を襲った年でもある。しかし皇太子のご成婚がテレビ中継されるということでテレビの売行きが急増、さらに家庭の電化が広まり、マイカーが普及するなど、高度経済成長時代にステップアップして行く年でもあった。
亥はいのししの事だが、核に通じ、植物の種の意味があり、植物の生命力が種子の中に閉じ込められている状態を表しているという。
種はやがて芽生え、成長し実を成らせていくのだから、亥はこれから発揮するエネルギーやパワーを蓄えている姿なのだ。
日本は二〇二〇年に東京オリンピックを開き、二〇二五年には大阪万博を開くが、日蓮宗門も二〇二一年には宗祖降誕八百年を迎え、十二年後には七百五十遠忌を迎える。充分な準備があってこそすばらしい成果を得られるわけだから、 「亥」の時代の精進こそ大切なのだ。 「亥」の姿に学ぶ事は大きい。亥というと猪突猛進という言葉がうかぶが、これは決して褒め言葉ではない。正しい方向を見極めて進む事を心掛けたいと思う。
合掌
酒井智章