年末のこと
12月を迎えると、どなたも年末・年始の準備で色々と慌ただしくなってくると思います。
年末の挨拶でよく「年の瀬」と言う言葉を耳に致しますが、この言葉は江戸庶民の生活からできた言葉だそうです。
「年の瀬」の‘瀬,は川の瀬のことで、川が浅くなり流れが急に速くなる所を言います。
逆に、川が深くなり流れが緩くなる所を‘淵,と言います。川の瀬は急流で船で渡ることが、困難な所を言います。
江戸庶民の生活は「ツケ」がほとんどだったようです。その「ツケ」を年末に清算しなければならないが、清算しまうとお金が無くなり正月を迎えられなくなる。支払いたいけど支払えないという、鬼気迫る状況、「ツケ」の支払いの困難さを、川の瀬にたとえて表現しました。そう言う事から、年末の慌ただしく押し詰まっている様子を「年の瀬」と言います。
また、12月を「師走」とも言います。語源は諸説ありますが、一番有力な説は「年末の挨拶回りなどで、師(お坊さん)も走り回るほど忙しい」と言う説です。古来より日本では年末になるとお坊さんに自宅に来てもらい、お経を唱えてもらう風習がございます。そのため、年末になるとお坊さんが西へ東へと走り回るほど忙しくなることから、師が馳せる=「師走」と呼ばれるようになったと言われています。
年末のお経回りを俗に「釜締め(かまじめ)回り」と言います。「釜締め」は、竈(かまど)の前で「火の神様(日蓮宗では三宝荒神)」に対して一年間の無事を感謝するのお経です。お経を唱えた後、お札を新しいものに替え、お正月は「火の神様」にお休みをして頂きます。したがってお正月は竈を使うことはできません。そのためお正月に食べるものを前もって準備しました。これが「お節料理」です。
現代では昔ながらの竈を見ることはほとんどございません。「釜締め回り」の風習も少なくなってきたようです。
師走に入り、年の瀬も迫って参りました。この一年間を無事に過ごせたことに感謝しましょう。そして来年が皆様にとって良い年になります様、ご祈念申し上げます。