今も昔も変わらずに

 お会式が終わると、本門寺では10月下旬から11月上旬にかけて、大堂前の空間を利用し菊の展示会が開かれる。葦簀(よしず)張りの小屋の中に、日頃丹精した菊の数々が並べられ、菊ファンはもちろん、訪れた参詣の人々を大いに楽しませている。
こうした菊の展示は元禄にころから京都を中心に広がった、と言われる。
菊作りの愛好家たちが、美しい花を咲かせる楽しみから、徐々に〝新品種〟を誰よりも早く育てるという、まるでニューモードファッションを世に送り出すかのように競うようになり、寺院の境内などで展示するようになった。花の美しさや斬新な姿、そして栽培技術を誇り、大勢の見物人を大いに楽しませた。こうした事は現代と何も変わっていない。
驚くべき事は、どの会場でも出品品種がほとんど重なっていないそうで、江戸時代中期の栽培所に図入りで多様な品種が紹介されている。
江戸時代に学ぶことはこんなところにもあるのだ。

合掌

酒井智章