巻頭言
伊藤日隆貫首写真

「浄心居三訓」2

浄心居の一階和室に入ると、金子日威貫首様揮毫の『浄心居三訓』の額が目に入ります。
その最初に書かれていますのは「初心不可忘」(初心忘るべからず)です。
この言葉は、室町時代の能楽師、世阿弥の著書である能の伝書『花鏡』に記されたものです。一般的には「物事を始めたときの謙虚な気持ちを忘れてはならない」という意味ですが、世阿弥は、是非・時々・老後といった三つの初心を説きます。意訳をすれば、人生の段階をあげて、若い頃・壮年の頃・そして年老いてからというところでしょうか。
その中で特に私が注目するのが老後です。若い頃、様々な出会いと経験を積む。その経験を積み重ねてさらに人生の幅を広げる壮年。そして、老後、年老いても新しいことに目を向け、常に自分の未熟さを自覚し、向上心を忘れてはならない。胸にささる言の葉です。
一生を通じて常に自分は初心者であるという謙虚な心を持ち、年を重ねても尚、積んだ経験や知識に驕ることなく、向上心を常に持って自身を磨き続けることを忘れない。
人生における大きな命題です。


合掌

日隆