秋の深まり
近年温暖化の影響か秋の訪れが遅れているようです。「暑さ寒さも彼岸まで」との慣用句は当てはまらないのか?「暑さ寒さも御会式まで」と感じるところです。
秋の深まりは、どことなくさみしさを感じることから仏教的に「無常」を最も感じやすい季節といわれています。無常とは、この世のすべてのものが常に変化し、同じ状態にとどまることはなく、永遠不変なものはないという教えです。
この時期、木の葉は寒くなるにつれて色づき、やがて散り、風に舞って土へと還っていく様子から特に無常を感じるのかも知れません。
これは滅びて無くなるのではなく、変化を通じて次の命へと受け継がれる循環を表しています。
このことを「諸行無常」といいます。すべてのものは変わり続け、それを悲しむのではなく、変わることこそが生の証あると説きます。
本門寺境内には多くの桜の木があり、一斉に落葉の時期を迎えております。やがて枯れ木のような姿になりひたすら冬の寒さを耐えしのぐのですが、見た目には分からない驚くべく秘められた力が内在し、やがて咲くべき季節が来れば一斉に綺麗な花を咲かせ私たちの心を和ませてくれます。それと同じように私たち一人一人の内面にも大切な力(仏種)が秘められております。
澄みわたる夜空を見上げれば光り輝く星たち、香り立つ草花の匂い、身に染みる秋冷を味わいながら、秋の深まりの静けさの中で自分自身の内面に秘められた力を感じる機会となっていただければ幸いです。
合掌
山村栄慎