栴檀香風

 先般当山では、「千部会」が営まれました。この千部会は正式には『法華経千部読誦会』と言います。法華経一部(序品第一から普賢菩薩勧発品第二十八まで)を千回読誦すると言う事ですが、法華経一部を一人で千回読誦しても千部ですし、千人で一回読誦しても千部になります。それが転じて、僧俗一体となり大勢で法華経一部を読誦し、お題目を唱える法要のことを「千部会」と申します。
千部会は、一年間の、いつ営んでもいいのですが、当山では「立教開宗会」(日蓮大聖人が初めて「南無妙法蓮華経」のお題目を唱えた日/建長5年4月28日)に合わせて、毎年4月27日から29日までの三日間営みます。
ちょうどその頃、境内では植木市が行われています。いつ頃から始まったかは定かではありませんが、二、三十年前までは関東随一の植木市と言われていました。しかし現在は住宅事情も変わりマンションが増え、庭付きの一軒家も少なくなり、植木市の規模も縮小されてしまいました。しかしながら、この時期は気候も良く、新緑が映え、植木市も相俟って、境内は爽やかな風に包まれています。
法華経の序品第一に『栴檀香風 悦可衆心』と言う経文があります。
「栴檀の香風は、多くの人々の心を喜ばす」と言う事ですが、言い換えると「良い教え(法華経)は、栴檀(白檀)の香りがする風となり、多くの人々を楽しませ又、清らかな心にする」と言う事です。千部会にお参りされた方は、御経とお題目のシャワーを浴び、爽やかな風に当たり、清々しい気持ちになられたと思います。
千部会と植木市は終わりましたが、五月のこの時期は若葉の香りがする初夏の爽やかな風がお山(本門寺)の境内を通り過ぎて行きます。
本門寺は御経の絶えない(何時来ても御経が聞こえる)お寺を目指しております。
御経を乗せた風がそよぐ本門寺にお参りして頂き、眼(新緑)と耳(お経)と鼻(若葉の香り)と味(美味しい名物精進アイスが有ります)と肌(風)の五感でお山を感じてもらい、心をリフレッシュして頂きたいと思います。皆様のご参詣をお待ち申し上げます。

合掌

梅本明宏